FXのスプレッドは私達投資家に大きく影響する要素の一つです。しかし、初心者の方には「スプレッドが具体的にどのようなものなのかわからない」という方もみえるでしょう。
結論からいうと、スプレッドは投資家が取引のときに支払うコストの事です。
この記事では、スプレッドの基本や計算方法、スプレッドの値が変動する要因を解説します。
取引コストで損をしないためにも、当記事を読んでスプレッドについて理解しておきましょう。
FXのスプレッドとは?
まずは、FXがどのようなものかを解説します。
スプレッドはFX取引をするのに必要な知識なので、この機会にぜひ覚えておきましょう。
FXのスプレッドは通貨の売値と買値の価格差
FXのスプレッドとは、異なる通貨を売買したときの「買ったときの価格」と「売ったときの価格」の差のことです。
スプレッド(spread)とは日本語に訳すと「広がり」という意味になります。
例えば、以下のように日本円と米ドルを交換する場合を見てみましょう。
・1ドルを買うときの値段が110.247円
・1ドルを売るときの値段が110.245円
この場合、110.247円で1ドルを買い、その後に1ドルを売って110.245円を買い戻すと0.002円(0.2銭)少なくなってしまいます。
この差額0.2銭がFXのスプレッドなのです。
スプレッドは取引の度に発生するため、実質的に投資する私達が支払う手数料(取引コスト)になります。
また、一般的にスプレッドの数値によって以下のように表現します。
スプレッドが狭いと投資家が支払うコストが小さくなるため、FX取引をするときは、スプレッドが狭い通貨を選んだ方が利益が得やすくなります。
スプレッドの単位
スプレッドに使われる単位は「銭」と「pips(ピップス)」の2種類があります。
「銭」は米ドル/円(USD/JPY)やユーロ/円(EUR/JPY)など日本円が絡む取引で使われます。
「pips」は英ポンド/米ドル(GBP/USD)やユーロ/豪ドル(EUR/AUD)など日本円以外の取引で使われます。
「銭」は日本円の1円未満を表す単位で、0.01円=1銭(1円=100銭)です。
「銭」は普段の生活では使わないので慣れないかもしれませんが、投資の世界ではよく使うので覚えておきましょう。
なお、銭とpipsの関係は以下のようになります。
一方、外貨同士の通貨ペアでは通貨の最小単位が小数点4位のため、1pip=0.0001で表します。
しかし、FX会社によって単位を表す定義が異なる場合があります。そのため、取引する前に単位の定義を確認しておくといいでしょう。
FX会社ごとでスプレッドは違う
スプレッドは同じ通貨ペアの取引でも、FX会社によって異なります。
理由はスプレッドがFX会社の収入源となっており、各社それぞれ独自の方針を打ち出しているからです。
特定の通貨ペアのスプレッドを狭くするなどして、他社との違いをアピールしてユーザー数増を狙っているんです。
つまり、各会社の経営方針の違いがスプレッドに表れているということになります。
FXのスプレッド提示率
FX会社を選ぶ際は、スプレッドの提示率をチェックしておきましょう。
FXの提示率とは
取引した注文のうち、各FX会社が提示した固定スプレッドがどれだけの割合で提供されたかを示す数値のことです。
提示率が高い方が提示されている固定スプレッドで取引できる確率が高い、ということになります。
なお、FX会社は提示率を95%以上に保つ必要があり、もし95%を下回った場合はスプレッドを変更するなどの対応がされる場合があります。
以下は、松井証券での米ドル/円の提示率が95%を下回ったときの対応です。
スプレッドは基本的に原則固定
スプレッドには、以下の2種類があります。
変動スプレッドとは、小刻みに価格が変動する為替レートに合わせてスプレッドの値も変動する仕組みのことです。
一方、原則固定スプレッドとは、各FX会社が独自の基準で値を固定している仕組みのことです。
変動スプレッドだと取引の度に支払うコストが異なるため、投資家が取引しづらいことから、多くのFX会社では「原則固定スプレッド」が採用されています。
変動スプレッドだと為替レートの動きによって取引コストが変わるから、投資家にとっては予測しにくくなってしまうんです。
原則固定であればどれくらいコストがかかるのか把握できるため、投資家は安心して取引できます。
スプレッドによる取引コストの計算方法
スプレッドのことは分かったけど、実際の取引でどれくらいのコストが必要なのか疑問に感じる方もみえるでしょう。
スプレッドによる取引コストは以下の計算式で求めることができます。
スプレッド × 取引数量 = 取引コスト
例えば、スプレッドが1銭(0.01円)で1,000通貨を取引した場合、取引コストは以下のように算出できます。
1銭(0.01円) × 1,000 = 1,000銭(10円)
この場合、一回の取引でのコストは10円となり、もし10,000通貨の取引であればコストは100円となります。
コストが10円と聞くと安いと感じるかもしれません。
しかし、FX取引は数秒や数分単位で何回も取引する場合があります。
取引回数が多くなればコストもその分多くなるため、取引するときはスプレッドの値がどれくらいなのかを把握しておきましょう。
FXのスプレッドが変動するケースやタイミング
スプレッドは原則固定が採用されているとお伝えしましたが、以下のような場合はスプレッドが変わる場合があります。
ひとつずつ見ていきましょう!
1.経済指標の発表前後
1つ目は、各国の経済指標が発表される前後のタイミングです。
このような経済の流れに影響を与えるような内容が発表されるときは、為替レートが大幅に変わる可能性があり、市場参加者が少なくなり流動性が低くなる傾向にあります。
そして、投資家は発表された内容を参考に取引を再開します。
すると一気に市場参加者が多くなり、市場の流れが一方向に偏ることがあるのです。
「買い」か「売り」どちらかに注文が殺到すれば市場の安定性がなくなり、スプレッドが広がりやすくなる可能性があります。
2.市場の参加者が少ない年末年始や早朝
2つ目は、年末年始や早朝の市場参加者が少ないタイミングです。
FXは24時間取引できますが、市場参加者が少ない時間帯は取引が成立しない場合があり、売り買いのバランスが保てないため市場が不安定になります。
一方、市場参加者が多い時間帯は取引が成立しやすくなり、売り買いのバランスが保てるためスプレッドが狭くなります。
具体的な時間や時期は、以下のようなタイミングです。
・早朝・・・日本時間の朝6時~7時ごろ(ニューヨーク市場が閉まる時間帯)
・年末年始・・・クリスマスや年末年始
このようなタイミングは市場が安定しておらず、スプレッドが広がりやすい傾向にあるので、取引を避けた方がいいでしょう。
3.予測できない出来事が発生したとき
3つ目は、大規模な自然災害やテロなど予測できない出来事が発生したタイミングです。
このような出来事は地理的に経済に大きな影響を与える可能性が高く、市場の安定性が失われる傾向にあります。
FX取引は予測できない出来事によってリスクが生じる可能性があることを覚えておきましょう。
まとめ
この記事では、スプレッドの基本や計算方法、変動要因について解説しました。
かんたんにおさらいです。
- スプレッドは売買する通貨間の価格差
- スプレッドは投資家の取引手数料でFX会社の収入源
- スプレッドの単位は「銭」か「pips」
- スプレッドはFX会社によって異なる
- スプレッドは各国の経済指標発表や取引時期によって異なる
FXのスプレッドは取引のたびに必要なコストで避けられないものです。
スプレッドはFX会社によって異なるため、会社選びの際に比較すれば無駄なコストを支払わずに済む可能性があります。
FXは取引回数が多くスプレッドの差が利益に大きく影響するため、取引する際はスプレッドの値がいくらなのか意識するようにしましょう。